「言葉のある会社」カヤックと今の私

この記事は、ex-KAYAC Advent Calendar 2018の17日目の記事です。

Songmuです。現在は、はてなと言う会社でチーフエンジニアとしてエンジニア採用等に関わりながら、プロダクトとしてはMackerelというサービスのプロダクトマネージャーを務めています。

カヤックには2011年から2014年まで在籍し、ソーシャルゲーム開発・運用のリードエンジニアを務めていました。主に甲子園シリーズのガラケー向けのタイトル運用が一番長く関わった仕事です。姫騎士と最後の百竜戦争というタイトルに企画から関わり、リリースから初期運用まで携わったのが最後の仕事でした。

カヤックは僕にとっては紆余曲折のキャリアを経て、30歳にしてやっと入った初めてのWeb企業です。複数台構成のWebシステムをスケーラブルにSPOF少なく構築し、それなりのトラフィックをさばきながら開発・運用する経験は初めてでした。なのに入社早々いきなりとあるタイトルのリードを任されることになり、sugyanや清さんに助けられながらなんとかその職責を果たした覚えがあります。

その他にも実力以上の仕事を数多く任せてもらいました。社内では色々ギャーギャー発言していたら、さっさとリーダー層にも上げてもらって、色々好き勝手やらせてもらいました。エンジニアとしてかなり成長できた3年半でした。

カヤックに入って「ああ、自分はエンジニアになれたな」と実感を得ることができたし、そういう意味で、自分のWebエンジニアとしての原点がカヤックです。

言葉のある会社

そういうこともあり、僕自身はカヤックにかなり影響を受けています。カヤック時代に得たものが今でも行動指針となることもありますが、それはカヤックが「言葉のある会社」であったことも大きいと感じています。

経営理念の「つくる人を増やす」が筆頭ですが、それ以外に僕が在籍していた頃に使われていて印象に残っている言葉を思いつく範囲で挙げてみます。

  • アイデアいっぱいの人は深刻化しない
  • 何をするかより誰とするか
  • 24時間遊び、24時間働く
  • 量が質を生む
  • 数字に負けない
  • のっかる優しさ
  • 仲間を助ける力を持て。仲間に助けてもらう勇気を持て
  • 情熱があって何かを始める人なんて少なくて、普通は何気なく始めたことに無意識のうちにのめり込んで、そこから情熱が生まれる
  • 完璧を目指すならまず終わらせろ
  • コミュニケーションは取ったもん勝ち

それぞれについて解説したい気持ちもありますがキリがないのでリストアップに留めておきます。それぞれ、役員や社員がいい出した言葉だったり、歴史上の人物の言葉だったりしますが、それらの言葉が社内で連呼されるなどしてブームになり、スローガン的にうまく定着するということがよく起こっていました。

言葉を大事にする姿勢

言葉の定着はヤナさんが意図的にやっていたものも多くあるでしょう。全体的に「言葉を大事にする」印象で、スローガン的な言葉を定着させることで、自分の考えや方向性を周りに伝えようとしていたように感じます。それは、ぜんいん社長合宿でしっかり話す姿勢や、入社前に社員に自分の本を読んでくることを推奨していたことなどからも伺えます。

いわゆる150人の壁と言われる、社員の数が150人を超え、ともすれば社員の結束が薄まりそうな時期に丁度「コピー部」を発足させたのも象徴的で、言葉の力で社内外に明確なワーディングで方向性を示して行こうとした姿勢が見えるような気がします。

ちなみに、入社前に自分の本を読ませることに対して、それだけ聞くとアレな感じで、眉をひそめる向きもあるかもしれませんが、実際ちゃんと読んでから入社すると、会社の思想や理念を理解してから業務に入れるので立ち上がりがスムースで良かったと感じています。

ちなみに、弊社にも創業者の id:jkondo さんが執筆した『「へんな会社」の作り方』という良い本があり、今読んでも面白いのですが、流石に古いので、今の経営陣による刷新版が作られないか密かに期待しています。

アイデアは考えるな。 「へんな会社」のつくり方 (NT2X)

「つくる人を増やす」

やっぱ特に「つくる人を増やす」という経営理念はシンプルかつ強力で良い。半期ごとの人事評価時期に経営理念について考えさせる施策も効果的で、社員に定着している。在籍当時に外部のリーダー研修を受けた時、参加者した社員全員がその経営理念を諳んじられることに対して講師が驚いていたのを覚えています。「普通の会社は自社の経営理念言える社員なんて3割いればいいほうですよ」と。

今でも僕自身の行動指針の一つになっています。僕にとっての「つくる人を増やす」方法は、ソフトウェアや技術を開発、提供することで、つくることを簡単にしたり、支えたりすることがメインだと考えています。

そういう意味で、今自分が事業としてMackerelというSaaS開発に携わっていることは「つくる人を増やす」ことにつながっていると考えています。

ちなみに「つくる人を増やす」と言う言葉、どこが漢字になるかちょっと覚えづらい部分があるんですが、「つくる」は「作る」「創る」「造る」色々あるので、平仮名なのは自然で、他の部分(人と増)は漢字になっていると考えるとわかりやすいと思います。

はてなのミッション・ビジョン・バリューズ

ちなみに、はてなにも以下のミッションがあります。

「知る」「つながる」「表現する」で新しい体験を提供し、人の生活を豊かにする

これは共感できる素晴らしいものだと思ってます。それに付随するビジョン・バリューも合わせて以下で公開されています。

http://hatenacorp.jp/information/mission

ミッション自体は、 id:jkondo さんが作ったものが引き継がれていますが、バリューズは今の社長の id:chris4403 が就任してから作られたものです。詳しくは以下のエントリを御覧いただければと思います。

はてなバリューズを作りました - はてな2代目社長のブログ

Mackerelのミッション・ビジョン・バリューズ

僕は今年からMackerelのプロダクトマネージャーになりましたが、そこでまずやったことは、改めて自分たちのプロダクトの理念を見直すことでした。具体的にはカヤック時代に学んだ「言葉を大事にすること」や、はてな自体のミッション・ビジョン・バリューズ(MVV)の影響を受けて、MackerelでもMVVを整えることにしました。そして、まだあまり社外には出していませんが、以下のようにまとめました。

  • ミッション
    • 「クラウド監視サービスを提供し、世のエンジニアの開発・運用プロセスを革新する」
  • ビジョン
    • DevOps中核サービスのデファクトとして進化しつづける
    • サービス監視・運用の価値を高め、面白くする
    • 顧客のサービス成長を加速させる
  • バリューズ
    • Infrastructure as Codeを体現する
    • devops文化を根付かせる
    • ドッグフーディング
    • エンジニアをワクワクさせる
    • OSSエコシステムと共生する

はてなのMVV同様、ミッション自体は昔からあったもので、Mackerel創始者の id:stanaka が提唱したものです。そこに対して、ビジョンとバリューズを固めて全体を補強したというところです。結構うまくまとまったんじゃないかと思っていますが、これをより定着させられるように連呼していかないとな、と考えています。

ちなみに、はてなの技術グループ(エンジニア組織)においても、グループのミッションとバリューズを固める動きが今年ありました。これはCTOの id:motemen を中心にチーフエンジニア陣のid:wtatsuruid:hakobe932id:shiba_yu36id:Songmu と協議して策定したものです。これについてはそのうち id:motemen がどこかで書いてくれるかもしれません。

まとめとおまけ

カヤック時代に学んだり影響を受けたりしたことが、今の仕事にも活きているという話でした。